2005年06月06日

原敬内務大臣(第一次西園寺公望内閣)と大浦兼武大日本武徳会会長、慈善団体の会員募集に警察官が関与する件について確執

防長新聞を眺めていたら面白い記事に出会った。水難救済会も、山口県の事例では、警察官が会員(寄付者)募集に従事していたので、この訓令の影響を受けたと思われる。その点から、目にとまった史料である。


「原内相大浦男の確執について
              武徳会員募集の件
  此頃は内務大臣と大浦男爵の間に何か
  確執ありし旨報道せる新聞ありしが今此
  事に関して東通記者が当局者より確聞せ
  る処なりと云ふを左に掲載せん
客年原内相が各府県知事に向て一の訓令を発し、警務長以下各警察官の如き平素尤も威厳を保ちて人民の保護者とならざる可からざる者が、彼の日本赤十字社と云ふ、又は愛国婦人会の如き、或は武徳会の如き団体に対して、社員と成る事を勧誘し或は寄付金募集の尽力をなすが如きは、避く可き旨を戒飾せられしに、地方長官中には右訓令の旨意を誤解して、警察官に限らず知事以下各事務官又は郡町村長の如きに至る迄一切之に関与する可からざる者の如くに速了したる者ありしを以て、武徳会の役員たる渡辺昇子及び北垣国道男両氏は、こは容易ならざる事なりとて両氏相携へて原内相を訪問し、如此き訓令を下したる趣意如何を質問したるに、内相は意外の感に打たれ、こは大なる間違にて予が訓令の趣意は武徳会のみならず赤十字社の如き、愛国婦人会の如き、其他すべての公共団体の会員募集とか寄付金募集などの事に付て、従来警察官が運動がましき事をなすが如きは公安を保護する職責を有する警察官のなすべき事にあらざるを以て、将来は警察官に限り之れに関与せざる様にとの訓令を発したる迄にて、貴下等の関係され居る武徳会のみを云ふたるにあらずと語られたるに依り、渡辺北垣両氏は、然らば地方官中に閣下の訓令を誤解して警察官以外の各行政官迄是等の事に尽力すべからずとの考をなし居る者ある故、此の誤解を解く為めに更に訓令を発せられたしとの意見を開陳したるに、原内相は、此の為めに特に訓令を発する程の事もなければ、何れ地方官召集の場合に誤解なき様注意すべしとの約束をなし、其侭と成り居りし処、今回地方官会議ありしに付き、前記の両氏は再び内務大臣を訪問し、更めて訓令を下されたるや否やを質問に及ばれたるに、原内相は、未だ訓令せざるにより直に其手続をなすべしとの確諾を得、原内相は此程伏見宮殿下が内務大臣以下地方官を御招き相成りたる砌り原内相より其旨を各地方官に注意し、警察官以外の各行政官吏が武徳会々員募集其他公共団体の事に尽力するは少しも差支なしとの注意を促がしたる事が、一二の新聞に誤解されて大浦男(武徳会々長)と原内相との間に確執のあるが如くに言伝ふるに至りし者なり云々」
(防長新聞、明治41年5月3日1面、引用に際し適宜読点を付した)

〔参照〕原敬日記、渡辺・北垣の来訪と談話を記す明治40年8月11日の条。
「要するに彼ら〔渡辺・北垣〕は従来警察官を利用して武徳会の為めに働かしめ、今は四十万円斗りも醵金を得て大浦兼武会長となり色々の事に之を利用し居たり」

警察官が現場で指揮を執るという点で、公設消防組と水難救済会は類似性がある。その寄付金集めを行うにしても、赤十字社や愛国婦人会とはやや性格が異なるのではないか。実際のとこをもう少し探索・考察が必要。


余談。渡辺昇は、明治42年か43年の記事を見ていたところ、武徳会の大会で、全国の県支部からの高段者と立ち会い、また、掛り稽古の受け手をしていた。武徳会に関係しているというのは組織の長であるだけでなく、「剣客」としての修練を続けているという面もあった。



2005年6月5日、山口県立図書館にて調査

rshibasaki at 18:21コメント(0)トラックバック(0)<山口県の諸団体>  

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