2005年10月09日

義勇艦隊について(防長新聞社説、明治37年)

「○義勇艦隊に就て  権利あるものは必ず責任あり。我が国民は今回海戦に於ける大勝利と共に東洋の制海権を掌握せり。随つて将来海上に於ける商業の安全を担保し及び航海権を拡張するが為めにも政府の艦船のみを以て足れりとせず、別に国民共同を以て義勇艦隊を私設せんとするの計画あるは最も喜ぶべきことに属す。帝国海事協会は此の目的を以て去廿三日晩餐会を開き、理事長有地品之允氏は其の希望の大要を述べたり。曰く、海事協会は平時に於ては海上の運輸、難破船の救助、引上げ船舶の評価、海事思想の普及等に尽力し、戦時に於ては義勇艦隊を組織し帝国海軍の一端に供へんとするに在りて兵商併び行ふを以て其の事業と為せるが、時局は恰も義勇艦隊の創立を促すを以て茲に多年の素志を実行せんことを期し、艦船は二等巡洋艦以下のものを十艘を作ることゝ為し、一隻百五十万円とすれば千五百万円なるにより、凡そ之を人口に割当て赤十字社の事業に倣ひ資金を募集せんとするに在りと。今や経済上に於ては都鄙窮迫の際なりと雖も、此等の時勢に急要なる計画に対しては、国民たるもの相当の醵金を拒まざるべし。然るに余輩は義勇艦隊組織の計画に附帯して別に希望するものあり。他なし、平時に於ける義勇艦隊の事業として、大に遠洋漁業を保護せんこと是れなり。或は艦隊の一部を以て遠洋漁業に従事するも亦た可なり。郡司大尉の占守島経営は一時人気を惹きたりと雖も、今日時局の結果よりいへば殆んど児戯に等し。戦後に於ける本邦の漁区は北方に向つて殆んど無限に拡張せられんとす。現に本県人の経営に係る砲殺捕鯨の如きも更に北進するを得べく、樺太島附近の獵虎[ラッコ]漁の如き、膃肭臍[オットセイ]漁の如き、総て大組織を以て従事するの価値あるものなり。軍事の目的よりいへば義勇艦隊に向つて此の如き事業を慫慂するは稍や失当なるやの感ありと雖も、唯に慈善心若くは義勇心を以て千五百万円の巨額を募集せんとするは容易の事業に非ず。亦此の資金を募集し得て義勇艦隊を創立するも、之が経常費は莫大なるべし。故に寧ろ大組織の漁業を目的として艦船を造り、戦時に於て之を義勇艦隊に特用せば、国富国威両ら[ふたつながら]之を全くするを得ん。敢て計画者に注意す。」
(防長新聞、明治37年8月27日2面1段、社説欄。句読点を適宜付した)

rshibasaki at 04:22コメント(0)トラックバック(0)<義勇艦隊>  

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