2006年11月23日

プロシア公使フォン・ブラントの証言

以下は、ミットフォードの回顧録の中に引用されたフォン・ブラント著『東アジアで過ごした三十三年間』の文面である。

「我々が−−というのは、イタリア公使のド・ラ・トウール伯爵とアメリカの軍艦イロクオイ号とオウナイダ号の艦長たちと、私のことだが−−税関の建物からその周囲の砂っぽい空き地に出た時に、おおぜいの外国人たちがそこにいるのが見えたが、彼らは行進する日本の軍隊を見ようと集って来たものらしかった。軍隊は数百人もおり、北側の開けた広い土地に接した道路を大坂に向けて隊列を整えて行進していた。
 我々は軍隊の列から三百歩か四百歩ほど離れていたが、外国人の大多数は、それよりずっと近い所にいた。突然、兵隊が立ち止まり、正面を向いたのが見えたが、それからすぐに小銃を連射する音が聞こえて、その大部分は我々の頭上をうなって飛んで行った。最初、私はそれを天皇側の軍隊と幕府側の軍隊との戦いかと思ったので、外国人居留地で、こんなことが起こってもよいものかと憤慨の言葉を口に出そうとした時、二度目の射撃が始まって、我々と日本人との間にいた外国人たちが逃げ始めたので、それが思い違いだと分かった。日本の軍隊は歩いていた人の群れに銃火を浴びせたのであって、その中にはハリー・パークス公使もいたのである。率直にいって、その時思ったのは我が身を守るために戦わなければならないということだけで、それは日本人が我々を追いかけて来ると考えざるをえなかったからである。
 彼らが六、七回射撃をした後で−−彼らは連発銃を装備していた−−静かに行進していったのを見て、少なからず、驚いたものである。(この後に水兵と海兵隊が上陸して日本軍を追跡したが、徒労に終ったという記述がある。)
 若い水兵が一人ともう一人の外国人が軽傷を負っただけで済んだのは、日本軍の照準が高すぎたことが幸いしたのである。彼らは税関の建物の上に翻っていた条約諸国の国旗目がけて何度も射撃したに違いない。ともかく、建物は弾丸で穴だらけであった。とかくするうちに、備前の軍隊についての新しい情報が入り、それによって確かめることができたのは、兵庫から神戸にかけて行進している間に会ったすべての外国人に対して侮辱的な振る舞いをし、多くの者を脅かして、その中の二人を槍で傷つけたということであった」
(英国外交官の見た明治維新、121〜122頁、太字と下線は引用者による)

1. 「若い水兵が一人ともう一人の外国人が軽傷を負っただけ」は、ミットフォードとサトウの証言と一致
2. 「兵庫から神戸にかけて行進している間に会ったすべての外国人に対して侮辱的な振る舞い」をし、「その中の二人を槍で傷つけた」という
3. 「若い水兵が一人ともう一人の外国人」以外に、別の「二人を槍で傷つけた」のか否は、この文面だけでは確認できない

*

なお、フォン・ブラントの著書は翻訳されている。『ドイツ公使の見た明治維新』(原潔・永岡敦訳、新人物往来社、1987年)である。その133〜136頁に、上記引用個所がある。

「若い水兵が一人ともう一人の外国人が軽傷を負っただけで済んだのは、日本軍の照準が高すぎたことが幸いしたのである。彼らは税関の建物の上に翻っていた条約諸国の国旗目がけて何度も射撃したに違いない」
(英国外交官の見た明治維新、長岡祥三によるミットフォードの英訳からの重訳)。元のミットフォードの英訳ではつぎのようになっている。
"Only one ship's boy and another foreigner had been slightly wounded, a piece of luck which I attribute to the Japanese having fired too high; they must have fired many times at the flags of the treaty Powers which were flying over the Custom House, at any rate the building was riddled with bullets."

「日本軍の第一回射撃の時でも、アメリカ軍艦の見習い水夫と、ほかに一人の外国人とが軽傷を負っただけであった。これは幸運だった。日本兵が銃をかなり上に向けて射撃したためである。彼等は税関の上に翻っていたアメリカ合衆国、イタリア、北ドイツ連邦のそれぞれの国旗を狙ったものらしく、少なくとも北ドイツ連邦の旗にはたくさんの弾痕があった」
(ドイツ語原文から原潔・永岡敦の翻訳)。

ブラントの本は2000年に復刻されており、近隣大学で所蔵するところも多い。相互貸借を依頼した。

rshibasaki at 18:57コメント(0)トラックバック(0)<神戸事件>  

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